中国返還20周年で汚職スキャンダル「赤信号」
曽蔭権・前行政長官に禁固1年8月 香港
香港トップの信用失墜 控訴準備、行政長官選にも影響
香港高等法院(高裁)は2月22日、公職者による不適切行為の罪で有罪の評決を受けていた前行政長官の曽蔭権(ドナルド・ツァン)被告(72)に対し、禁錮1年8月の実刑判決を言い渡した。1997年7月の中国返還後、香港政府トップ経験者の有罪判決は初めて。3月26日には行政長官選挙、7月1日は香港が中国に返還されて20周年を迎え、習近平中国国家主席が記念式典に参加する見通しの中、一国二制度への信頼が香港トップの汚職で大きく揺らいでいる。(香港・深川耕治)
略
曽蔭権被告は香港初代行政長官の董建華氏が任期途中で2005年に辞任後、ナンバー2の政務官(閣僚)ポストから二代目の行政長官に就任し、2005年から2012年までの期間、香港のトップに君臨した。
曽氏は蝶ネクタイがトレードマーク。1997年6月、英国政府からサーの称号が与えられ、1998年のアジア通貨危機でナンバー3の財務官として香港ドル防衛に尽力したことや夫婦で毎朝ミサに参加する敬虔なカトリック信徒との清新なイメージがあった。
しかし、政権後半から汚職疑惑が噴出。胡錦涛指導部(当時)との関係が良好だったため、地元ラジオ局で「人民が極端に走った場合、文化大革命のような運動が出現する」と香港の民主化運動を文化大革命にたとえて発言するなど親中カラーが強まり、支持率が急落した。
7月に中国返還20周年という大きな節目を迎える香港は一国二制度による高度な自治がどこまで成功しているのか、中台統一の動きを警戒する台湾も常に動向を見ている。その香港政府トップ経験者の有罪判決は香港市民だけでなく、中国政府の面目を失う結果となっている。
ナンバー2の政務官や同ポストから行政長官に就任した指導者が有罪判決を受けたことから「中国領になると中国同様に官僚が汚職に染まる」との懸念材料が強まり、3月26日投開票の香港行政長官選挙に向け、五人の出馬表明している候補者のうち、最有力候補である林鄭月娥前政務官、曽俊華前財務官ら閣僚経験者には厳しい視線が向けられている。
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